白猫とお婆さん。/もののあはれ
 

 テンちゃんとお婆さんは。
 仲良さそうに身を寄せて。
 僕を送り出してくれていました。
 テンちゃんはいつでも。
 優しいお婆さんの近くにいたいのだから。
 広い世界の事なんて。
 あの紐の事なんてちっとも気にならないんだろうなあ。
 そんな風に思いました。

 そして僕は。
 マイルドセブンとアンパンとオロナミンCの入った。
 コンビニ袋をぶら下げて。
 安アパートへの帰り道を。
 ブラリブラリゆっくりと辿りました。


 ガッシャンコン。ガッシャンコン。 
 ガッシャンコン。ガッシャンコン。 


 いつでも工場の音色響くこの町に。
 人々の歩み早いこの町に。
 空が窮屈で霞んだ空気のこの町に。

 心を許し始めている僕がいる事を唯々感じながら。

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