ナイチンゲール/千月 話子
 
楽しげに 笑っていた


あなたの蕾のような お手手が
わたくしの整然とした指先に
そ と触れては やって来るのよ 
慈しみは いつも
尖った先端から温かさを連れて
内へ 外へ


その時はやがて わたくしの
桜色の手の中で
ミルクティーのように
柔らかな鈴の音の調べになって


あなたのカリフォルニア・オレンジのようなお口へ
光り射す 再びの杏ジャム
笑顔から 春の陽が零れて
ミツバチの羽音のように
わたくしと あなたの部屋に
早くも五月は やって来る


生と生が 跳ねるようにぶつかって
冬から春へ 春から初夏へと






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