アドバルーン/しいこ。
ほらね?すごいでしょ?
アドバルーンが 浮かぶ日は
決まって 快晴の 良い日なんだ
ドリーミーな広告塔
あそこで ピエロなおじさんが
きれいな風船を配ってる
「僕、赤が良いな!」
「私、ピンク」
「黄色!」
「青。」
「オレンジ」
ピエロなおじさんニッコリと
ひとつひとつ丁寧に渡すの
時々 子供たちの頭をなでて
「どうぞ」というかわりに
三日月の瞳をして
真っ赤なお口を 大袈裟に 白い歯を二カッと出して
不気味な笑顔を つくるんだ
アドバルーンが無くなって
僕はいつか夢想をしなくなった
雄弁な現実と 憂鬱な毎日に
アドバルーンの空気は抜けて
すっかり あじけない おじさんになちゃった
あじけない 小太りの おじさんに…
笑顔を忘れた
本当のピエロに
いつのまにか…いつのまにか…
アドバルーンもなくなっていた
(2006/4/22)
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