彼の 人生/
もも うさぎ
度と日本の土は踏めまい、と覚悟した
行き先を告げられず乗せられた船の 舳先に
佐渡の島を 見た 瞬間のことを
その瞬間を 彼は見ている
大病に倒れ 暗い夜道を 家の中から運ばれた
担架の上から しっかり目に焼き付けた
しんとした真冬の夜空に浮かぶ
真っ白な 月のことを
その月を 彼は見ている
孫が 産まれた という知らせを受けて
朝の薄暗いバイパスを
興奮のあ
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