寂しい織物?四つの破片 デッサン/前田ふむふむ
 
む毛糸の中に溶けて、固められてゆく。静かに重々しく時を刻む夜が、小声で永遠を跨いでゆく。

思惟の海の灯台よ。
    老婆の手を、閃光で照らせよ。


2・春の夢―幻影

遠い春が朦朧とした幻想にめざめる。
うすきみどりの季節を咲かせて、
気まぐれに魅せる一片の淡い輝きが走る。
小川の蛙が鳴き声をとめる刹那、
季節が洗脳した清々しさとポツンとした不安の空隙で、
霞のような花吹雪の闇のなかを、
静かに歩む美しい娘が、朝の声を浴びると、
ひかりのなかに透けている。

儚く、切なく、眩いみずいろの音階を、溢れさせる、
やわらかい朝のひたいが、

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