東京/なかがわひろか
 
憂う雨しとしと泣いている
身に染みいるような
寄生虫(むし)の様

紛う影あの人が近づく
そして通り過ぎる
それだけの人

夢しんしんと
うるさい雪の様に
積もり積もられ
現実の芽は枯れる

東京・・・東京・・・
泣いて泣いている街東京
東京・・・東京・・・
錆び付き赤茶けた体内の水

東京・・・ねえ東京
あの人の背中遠のく街
東京・・・眠らないで東京
独りぽっちの輩の集合体

闇の虹色のカラーで
映る心はグラデーション
嗚呼おきれいね
嗚呼おやめよ
そっちの水は甘いわ

風吹き抜ける平野の
迷い道
繋がる人の群れは
羊飼いより臭く

闇引き連れて
眩しい夜明けの
光りをただただ恨み
泣く

(「東京」)

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