行動の準則(1)/佐野みお
ショパンの旋律に震えつつ
掌を変拍子で打ち鳴らそう
湖で一番美しい白鳥なんかになるまい
烏たることに自足しよう
ぶざまに群れ
餌を漁り太り気味となり
ふてぶてしく騒ごう
そこから立ち上がる思考を信じよう
パーティーには出席しよう
社交界のしきたりを覚えることを
恥じるまい
紳士淑女たちとの交友を
心から楽しもう
大地すれすれから都市を見上げる
その視線を保ち続けられればよいのだ
感覚の保ち方の難度が高いほど
その感覚には価値があるのだ
本を読み過ぎないように
書物の系譜は
先行者の嘘を暴く営みの連鎖だった
古典の語彙に
必要以上の権威を与えるのをよそう
市民としての義務を果たし
市民としての権利を主張し
日々を送る中でチャンスをうかがうのだ
大きなものをくつがえす仕事を
見くびってはならない
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