フィーネ/たかぼ
 
囲の
組織と強固に癒着した悪性腫瘍だった。だがエキスパートである私に
は困難な手術ではない。慎重に剥離をすすめる。しかし予期せぬ大出
血が起きる。昔のオペの記憶がまたよみがえる。あのときパニックに
なってしまったこと。普通ではあり得ない場所に珍しい血管の奇形が
あり、そこからの出血であったことを気づくのが遅れたことが少女の
死を早めたことは間違いない。同じ過ちはすまい。心を落ち着かせ、
動揺するスタッフに指示を出す。どこからの出血か。分からない。も
しやと探ると、果たして、昔の少女と同じ血管の奇形があり、そこか
らの出血であった。そんなばかな。確率的にこんな偶然はあり得ない

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