婚約指輪は結婚指輪/侍フィクション
 
  恐ろしい結婚式場もあったもんだね。
  
        あそこはもうありえないね。 

           違う式場またさがそうね。」

 彼はそんなふうに式場に毒づきましたが。

 指輪を失くした私自身のことには何にも一切触れませんでした。


   ぽろ、ぽろ、ぽろり。


 目からたくさんの悲しい粒が。

 やまない雨のように。

 いつまでもいつまでもこぼれ続けました。


   あれからもう3年も経ちました。


 それでも今でもあの日あの時のことを思い出すと。

 心臓があの時に戻ったみたく早く強く脈打ちます。

 でもね
[次のページ]
戻る   Point(6)