階段の滲む朝/結城 森士
階段を駆け上がる
少年の姿
朝の陽が
ビルに白い息を掛ける
いつもより薄い青空は
いつもより
高いところにある
透明の空間に残響する
鉄の階段を駆け上がる
少年の色
僕の影は
鮮烈の直線が散らばるこの街で
ゆらゆら(
椿の色が好きだった)
さっき見た
階段を駆け上がる少年 の姿
あれは残像だった
あれは
泣きながら帰ったあの日の僕
だから此処にはもういない
そしてあそこに
階段は無い(
空が高い)
再び
太陽は僕を突き放す
影を追いかけては、歩く
椿が、ゆら、つら。
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