光 ・  粉雪 ・ 蟻 ・ ・ ・/杉菜 晃
 
生温く

鴉の声にも

劣るべし   



◇燕


燕が飛来するのは

日の跳梁する真昼

彼らは故郷が

あまりに耀いてゐたものだから

夜になつてもまだ

明るさのなかを飛んでゐる            



◇鹿


鹿は立つてゐる

巌と同じすがたで


魔が差して

銃弾を発射すれば

跳ね返つてきて

天罰を受けるのは必至



◇林檎


樹の林檎が

山の紅葉を

奪つてしまつた



碧空ばかりは

高遠にして深く

さうはいかない



◇雪


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