きんぎょ/水町綜助
僕にとってはどぶ川の中泳ぐ金魚もきれいに見えた
緑にライトアップされた白いラブホテルはメロンシロップをかけたミルクアイスみた
いに甘そうだったし
腹が立てば吠えればよかったし
太陽と月が重なっても笑顔だった
いやいまでも変わらないか
うん変わらない
でも少しだけ湿度が高くなったかも知れない
あのときは
乾いた笑いが晴れ渡った夜空に上って
こころは乾いて
だからこそぶつけると高く澄んだ綺麗な音がした
ような気がする
(そして、僕らは当時「僕ら」と呼ばれてはいたが本当は「僕」と「僕」と「僕」だった
当たり前といえば当たり前のこと)
各駅停車は止まり
僕は歩く
神田川をのぞけば
浅い流れに何匹もの錦鯉
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