高い空を泳ぐように飛んでいく鮎の夢を見る/霜天
明るい夜も、暗い夜も、それぞれに色々な夜があったけれど。
遠く回り道をするように。言葉が言葉からそれからを選んでいくように、一瞬だったものを、ふと、足を止めて拾い上げてみれば。もう、「それから」が道になっている。単純なほどに、単純なほどに。首を傾げるくらい単純な一日の螺旋階段を上っていく過程でも、見慣れた君の名前がただのかたちにしか見えなくなる時がある。
街に着いた。そこで日記を終わりにすることにした。国道に沿っていくと大きな川があって、そこに架かる橋は赤く錆付いていた。君の家はその先で沈んでいるらしい。よく晴れた湖の名前、結局思い出せずにいると、ただの光にしか見えなくなった。
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