霧の朝僕は/
石瀬琳々
えていった
その意味も分からず
その運命も知らず
後ろ姿の幻影だけが
今もこの部屋に僕を閉じこめる
ガラスに映る疲れた顔には
深い皺ばかりを刻み
僕は力なく顔をそむけた
あの日の彼女と同じしぐさで
霧の朝僕は
白い虚しさにまかれる
もしかしたら
はかない憧れの思いに
いつか僕もこの窓を開けて
霧の中へと消えていこう
あの夏の日を忘れるために
あの夏の日に還るために
霧の朝いつか
何もかも捨てて
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