夕照/yukimura
 
のキスの仕草で
どこまでも落ちていくと
風はリンゴの皮のようにからだをむいていって
突然、胸の隙間から
心臓が目の前にとびだした
その心臓が母の顔になって
何も言うことがないのか 言葉が見つからないのか
だまったまま じっとぼくを見つめていた
あの日の夕暮れのようにだまったまま

詩を書く時はいつも赤い
落下する世界の中で
太陽と血液が共鳴すると
はげしくなったぼくの腕で
新たな関係が生まれる
あなたに出会ったあの日から
ぼくは今でも見つめている
こころの内側に沈む 母なる夕照を

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