ルシファー/佐羽美乃利
人間たちの祭の日に
僕は六本木の裏通りで踊っていた
そこのタトゥーの娘は
まだ信じてる
愛は麻薬より優しいと
行き場のない欲望が
地下水と交わって
この街を押し流すときも
人間たちは夢から覚めず
愛への憧れに首まで浸かる
ベルリンでフィレンツェで
上海でエルサレムで
僕は愛にすがって溺死した連中が
足に名札をつけて黄泉の国へ行くのを見た
繰り返される虚しさ
何千年という砂のような時間
かわいい人間たち
そこへお座り
愛は冷酷な宇宙が紡ぎ出した
暇つぶしの幻想であることを
僕が教えてあげる
誰にも愛を感じないことの
安らぎと幸せとため息で
君の魂を溶かしてあげる
語りかけても
誰も僕が見えないまま
愛は飛び散り
シャンパンの泡よりもろく
星のない空に昇って行く
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