すみちゃんのセーター/吉田ぐんじょう
 
泥棒のような前傾姿勢で
妹の洋服を
箪笥から引っ張りだして纏った
ふわわ、と甘いにおいが漂った

わたしは服を持って居なくて
だから何時も裸で暮らして居るのだが
この頃はとみに寒く
やはり
最低限度の人間らしい生活を営むには
冬に裸では駄目だと思う

わたしと妹とは
その昔
随分と体型に
隔たりがあったように思っていたが
その横縞のセーターは
まるでわたしの為に誂えたように
肩や鎖骨やおっぱいの膨らみに
過不足無く貼り付いた
ぺそん、と云う感じ

其の侭
妹のパンツとかズボンとかも履いて
すっかり人間みたいな形に成ってから
一年振りくらいに表へ出た
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