うたまくらの浜/Rin K
ことを、蟹だけが知っている
三 白良浜
熱い雪ってあるんだね。私が笑っても、祖父は決して笑いとばしはしなかった。遠い冬に苺をくれた手で、熱い雪に触れた。私はそこで思い出す。彼はかつては船長だった。世界にないものはない。それがキャプテンクックの口癖だ。
巻貝に耳を当てていると、祖父はいつも船を出した。その音のする海を探そう。
モーター音は大好きだ。ついでに冒険という言葉も大好きだ。白い飛沫はスピードの誇りらしい。海月は相当あわてる。
*
鳴り砂の声に似た
舵のきしみ
四 久美浜
地球の自転の話に、三半規管がむずがゆくなる
家路を急ぐ子どもが、狂ったように回る
回り続ける限り
海は青い
ゆけるところまで
ただ、ゆけるところまで
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