お仕着せの愛の洪水の中で独りぼっちと呟いたバカ/ヌヌヌ
ゴンドラを吊っているロープの切れる確率
エスカレーターが音もなく降りていく
作業員が点検時にボルトを締め忘れる確率
エベレーターが闇の中を音もなく降りていく
巻き上げモーターが故障する確率
エレベーターが闇の中を音もなく降りていく
扉の安全装置が故障する確率
いずれもゼロではない
微量な死の気配を漂わせてエレベーターは降りていく
自分が死んだら誰が泣くか考えた
指折り数えようとしてすぐ止めた
なんだか誰も泣かないような気がした
彼は落としたキャップを踏み潰した
彼はその制汗剤のキャップに
指切り防止のアールがつけられていることを知らない
エレベーターのワイヤーが3本以上張られていること
その1本1本が定員の10倍までの重さに耐えうること
例え全てのワイヤーが切断されても非常止め装置が働くこと
床部に緩衝器が取り付けられていることを知らない
たぶんそのうち知る
戻る 編 削 Point(2)