深層心理の怪物/吉田ぐんじょう
 
母が二階で
掃除機をかけている
天井が振動
する度に埃が落ちる

右側の窓を
あけておくのを忘れてしまった
閉めっぱなしでは祖母が
家の中に入ってこられないのに

あら
右側の窓を
誰かが叩いている
祖母だろうか
立って行くと
箱に仕舞われたままの
掃除機につまづいた

おや
では母は如何にして
掃除機をかけたんだろうか

窓の向こうには誰も居なかった
掃除機の音は止んでいて

調子が狂うな
と思いながら元通り
ちゃぶ台の前に正座した

本当は気づいているのだが
気づかない振りをしているのだ
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