裸の大将/
杉菜 晃
虫の歓声は佳境に入って
私は秋の風に揺れる虫たちの頭の上を
くらくらしながら運ばれて行った
一週間後
浴室に腰掛けているが
虫のすだきは
きれいに片付いてしまっている
すだきどころか
一匹の虫も鳴かない
鳴かないということは
彼らはもうこの世にいないのだ
その虫たちに向かって
虫がバカ なんてことばを
発してしまったことが
不謹慎に思えてくる
私は深まりゆく無声の
寂しい秋を前にして
うな垂れている
俺が馬鹿だったと
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