かわいいひと/436
きみはかわいい
けれど僕はきみの眉間を憎む
特にその皺のできた眉間を憎む
だからきみと一緒にいて
きみが眉間に皺を寄せると
いつもそいつをぐいぐいっと
指で伸ばして消してやる
きみはかわいい
なかでも僕はきみの目じりを好む
特にその笑い皺のできた目じりを好む
だからきみをいつもいつも
笑わせようと試みている
どうせ皺ができるのなら
笑い皺のほうがよっぽどかわいい
きみはかわいい
それは見た目だけのようだけれど
実のところそうじゃない
顔には人生が刻まれている
すべての記憶が刻まれている
それはまるでレコードのように
記憶を刻印していくのだ
だから
きみはかわいい
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