健司の日常/MOJO
 
。小さな車たちは健司自身の社会復帰を起想させる。手取りで二〇万円の給料。それが可能なら、地代の安い地域に引っ越し、中古のビッツくらいは持てるかもしれない。とそこまで考えて、履歴書を書く煩雑さ、面接までこぎつける確率の低さが重くのしかかり、またしても緩慢な虚脱状態に陥ってゆく。 
 アパートに戻ると、夕刻になってる。再びパソコンの電源を入れ、某巨大掲示板を覗く。興味を惹く書き込みは見当たらない。再び貧乏ゆすり。ネット麻雀。気の入らない読書。いつの間にか、窓の外は暗くなっている。緑と白のコンビニの看板が点灯する。昨日焚いた黄ばんだ飯をジャーから丼によそい、納豆と玉子で流し込む。夕食後の抗鬱薬を服用する。再び某巨大掲示板。夜更けて日付が変わるころに眠剤を飲み、灯りを消して敷きっぱなしにしている布団に潜る。今日の日よさようなら。明日もまた発作が来るのだろうか。来るなら来い。健司の意識が薄れゆく。目覚めるまでの時間は健司のもの。今夜はきっと広い家に引っ越す夢を見るだろう。
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