健司の日常/MOJO
 
 昼下がり、健司が部屋で文芸誌の短編を読み終わったとき、例の発作が起きた。
 鬱病で長く社会生活から離れている健司は、常に微発作状態にいるといえるが、ここ最近、強い脱力感に襲われることが多く、それは発作的である。虚脱感は常にあるが、それが増幅された状態とでもいおうか。パソコンのモニターに向かい、某巨大掲示板を覗きながら貧乏ゆすりをする。最近は興味深い話題が語られていることが少ない。どうせ暇つぶしである。ネットゲームの麻雀をする。どこの誰とも知らぬ者たちと架空の金を賭ける。それも数局打つと厭きる。パソコンの電源を落とす。傍らのギターを膝に乗せ、弦を爪弾いてみる。かつて健司は良いギター弾きであった。
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