青い声が聴こえる日 デッサン/前田ふむふむ
 
のは、
隙間のない空が、充たされた言葉で、
散りばめられているからだろう。
わたしには、ない空が――、
わたしには、持てない空が流れている。

わたしは、震える指先を、
今日も、乾いたいのちの水底に沈めている。

傍らで、慟哭するあなたの狭い背中に、
あつめられた茫々とした空洞を横たえて、
水底は、空の余白を探りながら、
途切れない微熱を繋ぐ。
失われた声が、繰り返し、心電図の波形に浮び、
遠くに僅かに見える、夢に舞う鳥の声が、
瞼の膨らみを弛めて、
ふたたび、病棟は乾いたみずに濡れる。



(教えてください。
(父さん、僕の涙がみえますか。
(母さん、僕の声が聴こえますか。
(海はいまでも輝いていますか。
(空はいまでも青いですか。

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