「少なくともあたしにはそう見える」/むらさき
電燈の下で
もりだくさんの
蛾が
土壁に群がって
矢印になってる
あたしは
バルーンスカートを
揺らしながら
その方向に
走っていった
暗やみが
生まれたての綿菓子みたいに
汗ばむあたしのおでこに
張りついていく
信号の色が
消え去った交差点
午前0時
劇的にやせ細った
ビーグルを連れて歩く
銀色の髪のおじさんが
あたしに向かって
何か叫んでる
「あんた、
靴はどうしたの?」
あたしは応えない
そんなまぬけな質問
聞かれたって
わかりゃしないわ
そう思って
前を見ると
銃で撃たれまくった
灰色の車が置いてあって
思わず立ち止まると
ゆっくり開いた窓から
だらりと垂れた右手が
ファックユーの形をしながら
お月様を突き刺した
そしたら
5億年分の
白い粉が
降ってきたわ
あたしのつむじの上にも
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