時のはしご/下門鮎子
に漂った――
もう天球も地球も見当たらなかった。
夜は怖くない、
怖いのは曇り。
でもこの冥さは夜じゃない、
目を開けてても、曇りのように
彼方は遮られるばかり。
ようやく目が慣れてきた。
足が生えてきて土をつかんだ。
誰かいる?
ふと振り返ると、家族が微笑んでいる。
かぞく、
風船が飛んでいかないように、
その糸をつかんで放さないもの。
わたしはそれをありがたいと思った。
すなおに、
むかし、少しだけ
うとましく感じたのとちがって。
小さいころ
ある日曜の昼下がり
いつもの居間
光
冷蔵庫の音
わたしはふいに「かえりたい」と思った。
急いでそれを飲みこんだ。
わたしは未来に帰りたかったのかもしれない。
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