鴎盟(かもめとの約束)/新谷みふゆ
最後の氷菓子は
いつも白いシャツを紅く汚して夏を綺麗にする
近付けば遠退く逃げ水のよう
いいことも 悪いことも そんなに変わりない
不思議なことに隣の犬は鎖を外し何処かに消えた
不思議なことにする
そう云う痛みを時はやわらかな空気で包んでくれる
きみにはもう逢えないと右の眼で想い
何年かは生きるのだからわからないよなんて左の眼で想っては
ちぐはぐな視力のずっと奥
薄れてゆく残像が鮮明な印象を描いていた
降り始めた浅黄色の雨が かもめを遠くへと運んでいく
町の音を耳に沈めながら歩くと
あたしの骨が乾いた音をたて笑っていた
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