花潜り/
 
久方振りの花逍遥
珍く機嫌のあんたから
誘い口説かれ花巡り

両眼遮る石竹時雨
風音ばかりが喧しく
あんたの睦言(こえ)も届きやしねぇ
二人そぞろに歩みゆく

外れず違わず迷いもせずに
奥へ奥へとまっしぐら
更に深まる石竹に
遊び隠れるあんたが背中

花はちゃんと見えてるかい?
そんな杞憂を投げ掛けて
返らぬ声に心萎まる
あんたが無言で立ち止まる

向かいおっ立つあんたが諸手
迷う事なく頸絞る
ちらり見やった入れ黒子
花がそんなに恋しかねぇ

踠き叫いて一呼吸
噎せる匂いに喉元詰まる
身頃の陰に吸った痕
花がそんなに恋しかねぇ

思慕から情から飛び散る前に
手前で引幕下ろしたらぁ
障る誓いを引っ掻いて
指解け拍子に峪虚(たにうろ)へ

褸夢切り裂きひらひらと
空から石竹追って来る
柔い霧に抱かれて
お上地べたも何処へやら







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