男性と女性のあいだ/山内緋呂子
仕事以外で
誰とも話せなくなった。
植木鉢に名札をつけた。
「人は愛し合っていないと生きていけない」という映画の台詞
「一人暮らしの女が猫を飼ったら終わりだ」という雑誌の記事
野良猫のわき腹は、素晴らしいのに。
寝ている喜捨を、ほんものの喜捨だと思っていた。死んでいるのか、と思うこともあったし、寝ているのに、たくさん喋りすぎているようにも見えた。
昨日、開店前のお掃除で、喜捨の台詞を思った。
「花沢さんって、家だ。チョモランマから帰ってきた場合、帰る家だ。
あんたって家か?」
お店の右から左へ、モップの動きに合わせて泣いた。
「別れるなら、そんなことは言わないで欲し
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)