言葉旅/海月
なれず
マイルドセブンの味が口の中に染みた
東京に来て数ヶ月が経ち気づいた事は夜でも足元が見えた
アスファルトの感触に違和感も覚えても気のせい
と、自分に言い聞かせた
答えがこんな所にないと薄々は感じていた
孤独を恐れて人込みに紛れてみた
本当の孤独は此処に在って
私は全力で逃げた
逃げ込むように蹲った
雑居ビルの谷間
何とも言えない匂いがした
思い出したのは苦い思い出
思い出すのは飛び出したあの日
数ヶ月前の冬景色
窓ガラスに書いた
誓いの言葉
「PS.おかえりさない」
窓ガラスには消えた言葉
二度と出会う筈ない言葉
私はもう少しだけ旅を続けるよ
あの日の気持ちが在ったから
私は何処までも行ける
そんな気がするから
言葉旅はまだ続く
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