灰色の波紋/結城 森士
された水溜りには魚の影が揺ら揺らと同じ場所を泳いでいたのだが、それを突っ立って見ているうちに薄い灰色の影となり遂には消えていった。わたしは知らないうちに行くな、行くな、と呟いていた、
(急に不安が背後に押し寄せて)
そうして、再び立ち上がり、もと来た道を引き返そうと振り向くと、ただ闇が広がっている、(ア、ア)何者かの意図によって仕組まれた錯覚と恐怖で動けずに佇んでいると先から影が近づいてきて、行くな、行くな、行くな、行くな・・・と声が追ってくる、(ア、ア、)痺れを伴った悪寒が脊髄を支配してわたしは後ろ向き
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