土手/アンテ
つ手渡すと
カナコさんはぱりぽり齧った
わたしと一緒のとき
けっして青い服を着ないし
ゆっくり言葉を選んでしゃべる
お化粧もしない
花畑を優雅に歩くカナコさんの
表情がうまく描けなくて
髪の色で顔を塗りつぶした跡
指でなぞりながら
カナコさんはくすくす笑った
カナコさんの本は
漢字とカタカナばかりだ
もごもごと言葉を噛みしめている
様子がおかしくて
牛の絵を描いてみると
今度はちゃんと
カナコさんの顔になった
人の記憶も
コピー&ペーストしたり
消去したり
できれば面白いのにね
そう言ったら
カナコさんが突然怖い顔になった
スケッチブックを閉じて
ゴザに寝ころがる
陽射しがあたたかくて
コピーしたみたいに
二人同時に欠伸をした
「終了」を選んで
目を閉じる
ぱりぽり
おせんべいを齧る音
こんな風にカナコさんと
また一緒にすごせるだろうか
くすくす
カナコさんみたいに笑ってみた
あたたかい手のひらが
わたしの頬を撫でた
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