俺たちの風、syota/佐野権太
の空、ペダルの光
ああ、とだけ短く答えた、正太
あてずっぽうに冷やかした僕を置き去りに
遠い目をした
空翔(かけ)る鷹の瞳は大人びて
恋の行方に風のジェラシー
*
なぁ正太
思うままぶちまかしたい胸のうちを
ぐっと堪えて、頭を下げるたびに
尻から透明なセメダインが漏れちまうんだ
なぁ正太
華やかな旋律の裏側で
決められた場所にベース音を置いてゆく
あいかわらず俺は
そんな生き方を選んじまうよ
なぁ正太
二浪したって噂、聞いたよ
それでも正太、俺には見えるぜ
涼しげな、遠い瞳で
冒険を楽しんでる、おまえが
あの頃とおなじ、きみどりの風に
シャツを孕(はら)ませた、おまえの横顔が
大切なものは
何ひとつ、忘れちゃいねぇ
そうだろ?
いつだって
俺ら
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