悲しみ/
ミゼット
「お前は泣き方を忘れたね。」
幼い私が言う。
「いらっしゃいませ」
笑う私。
「こちらへお願いします」
客に背を向ける。
途端、
ガラスの中に目が映る。
「悲しい理由は見つからないよ」
電話口で私は言う。
それは嘘ではなくて、
「働けることが嬉しいの」
嘘ではないのだけれど。
「お前、泣き方を忘れたね。」
と
映るその目は言う。
瞳に言われて思い出してしまう。
身体の奥底
私の中には
澱が、溜まっている。
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