冬の終わり/れるむ
 
生暖かい風に

数々の想いを馳せていた

初めて自転車に乗れたときのことだとか

ひとり泣いた夜だとか

もう陽は沈みかけていた

紅い空がやけに僕を孤独にさせた

音がして振り返るけれど

何も

なかった

空を見上げて

一つ呼吸をして

幾ばくかの一歩を僕は踏み出した

冬の終わり

吐き出した息は白くはならなかった
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