思い出/結城 森士
 
空の青に風が線を描く
空の青に流されていく

薄紫色の花を持つ
貴方の笑顔と空気が
透明な街の中に浮かんでいる
貴方は
不意に後ろを振り返って消えた
赤い風船が飛んでいる

透明な雫が街を映し
シジミ蝶はタンポポに停まっている
透明な車が走り抜ける路地で
貴方は
不意に空を見上げて消えた
赤い風船が飛んでいる

公園は草木の匂いがした
貴方は自由な羽を見つけた
僕等はそれを殺しはしなかった
僕等がその羽に手を伸ばした時
赤い風船が空に吸い込まれて消えた

薄紫色の思い出が
空の青に風が線を描く
空の青に流されていく


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