ジュラシック・パーク/千月 話子
ラス皿の縁から
溶けて流れて行く先は
深海
色の見えぬ生物に
いつもと違う
水 水 水の
纏わり付いて
「冷たい」と
発光する体 美しい体
そのようにして
過去と未来が
ここで繋がった瞬間を
誰も知らない
嘘か本当か 本当か嘘か
いつも誰も知らない
暗闇が 深過ぎて
日焼けした かき氷屋の主人は
定休日の 深夜に
発熱した右腕を ギシギシと外し
ビニール袋に入れてから
冷凍室で 翌朝まで凍らせる
今夜は 氷河期
古臭い 霜の奥で
指先の指紋から
アンモナイトが浮き出して
ガタガタと 震えていた
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