風鈴/霜天
 
外れたままの受話器で
それからの答えを待っていると
見知らぬ誰かと話が通じてしまう
こちらは、遥か国です
隣で寝ている父の横顔
最後の声はいつだったろう
僕から父へ真似てみせれば
こんな声だったかもしれない
今、受話器の向こうで
風鈴は静かに誰かを呼び続ける
我が家の軒下には空が落ちてきて
みんな、が溺れている
平和な夏
小さな町を、故郷と呼べるかを迷って
いるうちに、夏の庭は浮上を始めて
ここもいつか
遥か国です
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