笹舟/
明日殻笑子
世界になった
「そのためならぼくは穢れにも痛みにもなる」
とき、わたしが流したものは
透明の
ほかには
なにもない
涙
そう透明のほかにはなにもなかった
あなたから湧きでる
無機質な岩清水のように
いちばんふしあわせで
かなしい場所を知っているかい
それは穢れも痛みもない
世界でしょうとわたし
あの日のあなたを思いだすの
悲劇と呼ぶには少し
透明が過ぎるのだろうけど
手を放せばちゃんと
笹舟はきらきらと濁流にのみ込まれて消える
戻る
編
削
Point
(12)