笹舟/明日殻笑子
 
世界になった


「そのためならぼくは穢れにも痛みにもなる」


とき、わたしが流したものは
透明の
ほかには
なにもない

そう透明のほかにはなにもなかった
あなたから湧きでる
無機質な岩清水のように


いちばんふしあわせで
かなしい場所を知っているかい
それは穢れも痛みもない
世界でしょうとわたし
あの日のあなたを思いだすの


悲劇と呼ぶには少し
透明が過ぎるのだろうけど
手を放せばちゃんと
笹舟はきらきらと濁流にのみ込まれて消える








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