過ぎ去り色の絵画/結城 森士
 
黒い煙に包まれた
幼馴染の少年は黒い煙に乗って
何処かへ行ってしまった

・・灰色の思い出・
は何も感じない・
はあの日記憶を置いてきたしまった
、あの日笑顔を捨ててきたしまった
蛍光灯の森の中

変わり行く季節の中で
出会いはみんな空虚だった
未来は不透明な割れた硝子
灰色に染められていく絵画の中で
光の中を思い出す

薄い光の中
「お母さん」
   手は
   いつも近くにあった

変わり行く季節は
タンポポが好きだった
シャボン玉を割った
風船も割った夢を見ていた
・母の手・
は呼応して死んだ
綿毛が飛んでいく

祖母に連れられて歩いた
祭囃子 金魚を連れて帰りに渡った
天の川 夜のアパートに幾つも浮かぶ
黄色いランプ 星空に赤い金魚

変わり行く季節に
・少年の笑顔は二度と戻って来ない・
は、辛さを忘れるために
決して落ちない血に塗られ
色の無い世界を闇雲に
駆け回っている

灰色の季節
あの日から
純粋な涙は流れなくなった
少年はモノクロの林の中で
「お母さん」
は呼応している
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