空洞/松本 涼
 
次の風を待つ間に私は窓際に横顔を
貼り付けて猫背の時間を撫でていた

窓の遥か下にある小学校の校庭では
派手に盆踊りのテープが鳴っていて
けれどこの部屋には更に大きく響く

太鼓の賑やかがくるくると宙を周り
私は飢えた空洞へと不送達の熱達を
集めてバケツでせっせと運び始める

ようやく街が静けさに横たわる頃に
そろそろと瞼を上げた風は動き始め
バケツを置いて私は大きく窓を開く

満ちることのない空洞を愛する為に

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