青色の血/明日殻笑子
天楼をながめながら老人たちは
これを異文化だと金の皿のような目をして笑っていたし
切腹を知らずに育った若者たちは
情に虚ろなまま自由を飼いならそうと
逆に自由に噛みつかれて凶暴なまでに不自由をふりかざす
同じ彩度の赤が手首から垂れて
違う彩度の赤が誰かから垂れて
けれどそんな赤じゃもう誰もかなしいとは言わない
もう いいじゃないか
うまくまるく目をそらしたら
いいじゃないか いいじゃないか いいじゃないか もう
誰もがそう思わずにはいられないのなら
先生 にんげんとは
さびしい、本当にさびしい生き物なのかもしれない
だけれどそれでも私は
こんなにも深い青が
満たされるように抱きしめてくれる星に
生まれてこれたというただそれだけのことを
こんなにもいとおしいとそう思うことで
ひとに流れる青色の血が癒されることを願ってやまない
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