息も切れ切れに そっと掌を差しだし 「ほらみて」とわたしの子どもが言う。 わたしは頭の中で おそろしく黒い色をした もやもやを忘れ去って 笑いかける。 そうだ。 わたしは母になったのだ。 もう悲しいことを考えてはいけない。 雨の日も風の日も この子と共にいなければならない。 頭の中が ぼんやりと白い色をした もやもやで満たされて わたしはやっと 子どもに喋りかける ことができる。