白の発光体/新谷みふゆ
あたしがカーテンを決して開けようとしなかった
日も、開けることのできなかった日も、カーテン
は知っていて、ただひらひらとゆれ光を吸い続け、
繰り返される事で憎しみが増すなら、繰り返す事
で愛しさが深くなっていく、白のプリズム、群白、
窒息するほどあたしが捲かれていく、朝の発光体、
朝を繰り返し、あたしは眼を開くことが愛しくなっ
た、何も混ざらない白でなく、まぶしすぎて白と
しか見えない色がまぶたの内側へ沈んでゆくから、
カーテンが見ている、毎朝毎朝やってきては眠る蝶
の群れを見ている、今朝のカーテンはまるきり蝶を
導く白い野ばら、其処にはあまい匂いが少しあり、
いつかあたしもこのテーブルに朝を描いていくのだ
ろう、一羽の蝶が燐粉を散らし、ゆっくりとあたし
が発光体へと変化を遂げる、野ばらが降っている。
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