書かれた-叔母/音阿弥花三郎
 
が点在し
その中に叔母のうちがあるのだ。
覚えのある匂いが漂って来た。
もう大丈夫だ。
華の匂い
仏華の匂いだ。

こどもはまだ眠っていた。
叔母はアサリを煮た。
見る間にアサリは口を開けた。
アサリの身が肉を際立たせ煮立っていた。
  
  *

叔母とは密かに叫ぶ貝である
貝とは平面と立体を流れる膿の行方だ
悪臭を放つ腐敗の時刻に向かい
ゆったりと胸元をはだける
踏み込めぬ浅瀬
無明の満潮が迫っている
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