女子高生/三州生桑
く言って、彼女は雨の中に出て行く。
家を知られたくないのかも知れない。
私は車をUターンさせた。さうして、ずぶ濡れになってゐる彼女と目が合った。
女子高生は、憎悪に満ち満ちた目で、私を睨み付けてゐた。
ぎゅっと握られた拳が震へてゐるやうだった。泣いてゐたのかも知れない。
「ああ、しまった・・・」
私は、知らぬ間に、彼女を深く深く傷つけてしまったことに気が付いた。
何かひとこと言ってやれば良かったのだ。
「そのピアス、可愛いね」
「海に連れて行ってやらうか」
簡単なことぢゃないか。私は何度も溜め息をつく。
ルームミラーに映ってゐる彼女は、いつまでも私を恨みがましく睨みつづけてゐた。
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