鳥とともに/nt
 
死が芽生える時刻は
まよなかだけではない
少年の空想の内でも

子を産むこともまだ知らない
子宮の中に 細胞
は もう芽ぶいていた
医者が論文を書いている間に、
家族が茶漬けを食っている間に、
たしかに肥え、
滝のようにさからいがたく、
姉の身体は
蹂躙された

姉の
頭脳は 十代の時分からすでに
裂けていた
幻視と幻聴、
ありえない不安にもう
蹂躙されていた、
ひとの言葉の届かない高所に
彼女は鳥とともに住み、
三十こえても
おびえる子どものように
素朴で、

「統合失調症」
だそうだった

むすばれない言葉の
隙間めがけ
隊列組んだ
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