夕凪ぐ、から。/夕凪ここあ
 
たはずなのに
どこにも辿りついていない気がした昼下がり
着た道を辿っても戻れはしない気さえした
かといって水平線にすら届きはしない

あぁ、ずいぶん遠くまで来てしまった、と少女は
座り込んだまま動かない ただ
ゆっくりと呼吸する 
波がそうするように

次第に
空は夕暮れていく
見えなかった水平線が
永遠のような長さで真っ直ぐに
水面と空とを切り離していく

夕暮れは後を追われるように
夜の色に染まっていく
水平線には何もないのだ、と
言うように再び曖昧になる境界線

少女の
丸まった背中も見えないほどの夜に
どこも見ないまま呼吸する少女
の呼吸音はただ波音に掻き消されて
真夜中、
少女はもう帰り道がわからない
夢を見る、潮風のおかげでうなされることもなく


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