明日死んだら言えないままだよ。/朽木 裕
オレが呼吸を忘れた頃には傍に居て愛して。
…なんて軽口。
息出来ない位の眩暈でもって
彼岸をただただ夢見てた。
「好きなんだ」
言えやしないままオレは死ぬのか。
ただの冷たい肉塊に愛を無償で
くれる人間が居ると思うのか?
―居るわけがない。
だから思うんだ。
この身体が生きている内に伝えようと。
好きなんだって、そう言おうと。
なのに誓いの翌朝またオレは逃げる。
侵されることのない安全でやすらかな日々に逃げ込む。
好きなんだ、って言いたい。
なのに言えない臆病者。
明日死んだら言えないままだよ。
そう思うのに。
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