明日死んだら言えないままだよ。/朽木 裕
 
オレが呼吸を忘れた頃には傍に居て愛して。

…なんて軽口。

息出来ない位の眩暈でもって
彼岸をただただ夢見てた。

「好きなんだ」

言えやしないままオレは死ぬのか。

ただの冷たい肉塊に愛を無償で
くれる人間が居ると思うのか?

―居るわけがない。

だから思うんだ。
この身体が生きている内に伝えようと。
好きなんだって、そう言おうと。

なのに誓いの翌朝またオレは逃げる。
侵されることのない安全でやすらかな日々に逃げ込む。

好きなんだ、って言いたい。
なのに言えない臆病者。

明日死んだら言えないままだよ。

そう思うのに。
戻る   Point(3)